真っ白な雪に包まれた世界にもし鏡が落ちていたとして、
さわらずに、自分を写さずに、その鏡を見つけることができる?
もし、できるならその方法をおしえて。
たしかめたいことがあるの。
北海道の東側にある野別市の野別市立南陽高校では、四年前からある噂が流れていた。
それは、四階の女子トイレに交通事故で死んだ留学生の幽霊が出るというものだった。
留学生の幽霊、というのが珍しいと言えば珍しいが、どこの学校にもあるような噂の一つでしかない、とみんなが思っていた。
北海道の長い冬がやっと終わりに近づいた三月の終わり。
冬の最後のあがきのように、朝から大粒の雪がゆっくりと降っていた日の放課後、
御堂道明は廃屋を隠れ家にしている登校拒否児の長池小月の頭を撫でていた。
和泉和歌奈は友人の立花鈴夫と一緒に幽霊を探しに夜の校舎に忍びこむ準備をしていた。
田之上小太郎は風俗の割引チケットを持って風俗店「フェランス革命」の前に立っていた。
それぞれが、これから出会うことを知らずに。
今は静かに眠っている虚ろな存在の浸食に、彼らはまだ気づいていない。
ゆっくりと回転しながら沈んでいく、誰かの夢をまだ知らない。
七人の主人公たちが織りなす、冬の終わりの、七つで一つの物語。
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