2010年10月ログ
2010年10月01日

幽霊的瞬間 第2話

『Indigo』を買ったら幸せになった!
そんなご意見が続々よせられていますッ! マジで!
幸せになりたかったら買うしかねーッ!

で、『幽霊的瞬間 第1話』の続き。

渡辺さんに「下さい!」ってお願いしたら
「やだ……あそこビショビショ乙女ゲーサークルだ……」
って思われるのかな

……というもっとも過ぎて、
眼から火花が飛び散りそうなご意見がありました。
なんというミステイク!
その場でちょっと受けることだけ考えて、
他人のことはあまり考えない、この性格がまた悪い方向へと!
他人を恐怖のどん底へと!
きっと、そんなことはないと思いますよっ!(泳いだ眼で)。
まぁ、別に貰い手がいなかったら、それはそれでいいや。
っていうか最初から期待なんかしてないもん!
……一話は、ヒロインしか登場してなくて、
どんな話なのか空気もつかめないと思うので、
重要キャラとの会話シーンまで。
……あんまりっちゃあんまりな、
とても女性受けしなさそうなキャラですが……。
第3話からは、一週間に一回か、それ以下のペースで、
出していこうかとワシは思っとる!

『幽霊的瞬間 第2話』

「ファック!」
えっ? あっ、この声って!
笑顔の人々を不必要に威嚇しながら、
銀色でトゲトゲの鋲を打ち込んだ革ジャンにモヒカンの男が、
私にどんどん近づいてくる。
しかめっ面で私を真っ直ぐに見つめて、
「ファック!」
「もっ、モヒカン先輩!」
約一年ぶりに聞く声。
モヒカン先輩は私の肩を抱くように力強く引っ張って、
「ついて来い!」
「はっ、はい。ついて行きます」
モヒカン先輩の背中に、RPGの仲間みたいにぴったりくっつく。
今までが嘘のようにスムーズに進む。
トゲトゲの服に殺到したら怪我は間違いなしだもんね。
人の群れが真っ二つ!
凄いや、モヒカン先輩。モーゼみたい!
二十メートルくらい進むと、勧誘の人はいなくなった。
どうやらサークル勧誘は校門付近だけで行われる決まりらしい。
モヒカン先輩は立ち止まって私に振り返った。
「くそノロマが」
先輩が私に悪態をつくのは挨拶みたいなものだ。
だから少しも嫌な気分になんかならない。
「助けてくれて、ありがとうございます」
「へっ、相変わらずクソデコビッチな童顔だから、
糞なめられて、あいつらに近づかれるんだぜ。
唇か鼻にピアスつけろって前から言ってんだろうが、ファック」
……つけるか。
「それが嫌ならのデケー額に、虎の刺青でも入れろや」
そんな大胆な大学デビューをするつもりはない。
っていうか、再会しそう早々、デコのことばかり言うな。
「だいたいなんだそのファッションは、あん?」
「ファッションって……。
普通にピンクのワンピースに、白のカーディガンですけど……」
春の一般的な格好だと思う。
もっと北海道じゃこんな格好は、
五月も中頃にならないとできなかったけど。
四月にこんな軽い格好ができるなんて、
それだけでちょっとウキウキだ。
本土にいる実感で胸が一杯になる。
モヒカン先輩は呆れたように、パシッ、と自分の額を叩いて、
「普通? バカヤロー!
ファッションっていうのは威圧のためにあんだろうが?
だっちゅーに、そんなふわふわな格好しやがって、あんっ? 
オメー、バカだろ?」
私とモヒカン先輩との間には、
ファッションについての深い谷があるようだ。
「……え~っと、先輩は相変わらずモヒカンですね」
「おう、俺はモヒカンだからよう」
少し照れたようにうなずいたモヒカン先輩は私の手を見て、
「ん? なんだそりゃ?」
「サークル勧誘のチラシですけど……」
「くだらん紙をたくさんもらいやがって、バカが」
言うなり、私が両手に抱えていた紙の束を一枚残らず奪った。
「あっ、それ捨てるんですか? 
一応、どんなサークルがあるか確認しようかな、
なんて思うんですけど」
モヒカン先輩はトゲトゲの服のポケットやジーンズのベルトに、
ごそごそ、と紙を突っ込んで、
「捨てねぇよ。俺のケツを拭く紙にするだけだ」
いや、わざわざそんなことしなくても。
……っていうか、普通にトイレットペーパーを使えよ。
「オメーはサークルの確認する必要なんかねぇ」
「……それはどうしてでしょうか?」
とても嫌な予感がします。
「オレのサークルに入るからに決まってんじゃん、バカが」
決まってる……のか。
「えっと、その……サークルくらい自分で決めたいんですが?」
「ファック!」
「はい、わかりました」
……はぁ。どうせモヒカン先輩から逃れることなどできないのだ。
清くあきらめよう。
「で、モヒカン先輩ってどんなサークルに入ってるんですか?」
「決まってんじゃん」
そう言って口を閉じる。
……何が決まってんだよ。それで説明したつもりか?
「あの~、せめてサークル名だけでも教えてくれません?」
「どパンク!」
「えっ?」
「どパンクアナーキー研究会!」
……うううっ、なっ、なんて頭悪そうな研究会!
私はそんなサークルの部員にならなきゃならんのか?!
ビックリだ!
「アナーキーということは……その……。
無政府主義についての研究会?」
「ファック!」
「わかってますよ。パンクなんですね。
シド・ビシャスで、ストラングラーズでクラッシュなんですね」
「ファ~ック」
満足そうにうなずいた。
私とモヒカン先輩は南陽高校放送部の先輩後輩。
とにかく無茶をするのが、その放送部の伝統で、
私もかなり無茶なことに付き合わされた。
一番の思いではやはり……。
江戸川乱歩の『パノラマ島奇談』に影響されたモヒカン先輩が
「俺達のパノラマ島を作る!」と言い出したことだろう。
『パノラマ島奇談』とは妄想に取り付かれた男が、
脳内でテーマパークみたいのを作ったりして素敵なことになる、
という話らしい。
私は読んでないからよく知らない。
放送部なんだから『パノラマ島奇談』のラジオドラマを作ろう、
となるはずなのに「パノラマ島を作る!」となってしまうのが、
モヒカン先輩の怖ろしい所だ。
で、夏の合宿で無人島でキャンプをしつつ、
そこにパノラマ島を作る、
という明らかに正気を失った企画が放送部で実行されてしまった。
島に到達する前から、
モヒカン先輩が漁船にひき逃げされる、という、
この世のものとは思えない事件発生。
その後も当然のように、
モヒカンが岩の隙間に挟まってモヒカン先輩が動けなくなったり、
初めてのお酒でわかりやすく正気を失った和田くんが
「生きた馬頭観音を作るために野生馬を捕らえてきます」と言って、
夜の闇の中に全力疾走したり、
植物に詳しいゆきちゃんがキャンプ地のそばの花の群生を見て
「これ、阿片ケシですよね」と虚ろな目で言ったり。
冗談から始まった(モヒカン先輩は本気だったかもしれないけど)
江戸川乱歩ごっこだったのに、
江戸川乱歩の猟奇世界に、みんな侵食されてる、と気づいた私は、
恥ずかしかったけど率先して水着に着替えて(しかもビキニだ)
みんなに海水浴を強制した。
北海道の東側の海は、夏でも超冷たいけど、
そこは高校生パワーでぶっちぎった。
……今考えればバカバカしいけど、
そうやって健全な方向にもっていかないと、
本当にヤバいことになってしまう、と切実に思ったのだ。
無事に合宿は終わったけど、
あのまま江戸川乱歩世界に突入していっても、
それはそれでおもしろかったのかも? 
私は余計なことをしたのかな? 
って時々、思うことがある。
だとしても阿片ケシはまずい。
やっぱり中断させてよかったんだと思う。
……それにしても、またモヒカン先輩と一緒になるなんて。
別にモヒカン先輩を追っかけて、この大学に来たわけじゃない。
文芸学科のある芸大を幾つか受けて、
ここだけ受かったという、それだけの話。
にしても、難易度がここより上の大学に落ちるのは当然として、
ここより低い大学にも落ちた、
というのはいったいどういうことなのだろう。
……ここに入学して再びモヒカン先輩の後輩になるのが、
私の運命なのだろうか?
「おう、運動場に行くぞ。見せてぇもんがあるんだ」
「えっ? なんですか?」
「オメーの入部記念行事だ」
私が入部を断るなんて、少しも思ってなかったみたい。
そんなことをしていただいてありがとうございます、
とはさすがに言いづらい。それに……。
「私はこれからオリエンテーションがあるんですが」
「ファック!」
いやいや、そう言われても……。
「最初の最初ですから、受けておいた方がいいですよね?
オリエンテーションが終わるまで、
待ってもらうことはできないんですか?」
「できねぇ」
あ~、そうですか。でも、さすがに……。
モヒカン先輩は自慢のモヒカンを両手でこすりながら、
「最初のオリエンテーションなんか行く必要ないぜ。
あんなもん、出欠なんか取らねぇし、
事ファッキン務の連中のつまんねー話を聞かされるだけだぜ。
わかんねーことがあるなら、俺が教えたる」
「はぁ……。それなら、もうそれでいいですけど」
まぁ、確かに事務口調の話を聞くより、
先輩から話を聞いた方がわかりやすそうではあるし……。

2010年10月02日

虎の穴さんで(渡辺ファッキン僚一)

虎の穴さんで特集ページを作成してもらいました!
というわけで、Indigoを買ってくださいっ!

あー、もう! なんかもっとバーンッと売れる方法ねぇかなぁ!
どっかにそういう方法が転がってねーかなー!
ねぇ? なんかねぇのか? 誰か考えて!
ぶっちゃけた話が、やったらおもしれぇと思うんだよなぁ!
どうやってプレイしてもらうまで、もっていけばいいのかしらね?
自信過剰言うけど、おもしれぇって! 絶対! なっ?
そろそろわかれや、オラーッ!
アンタもそう思うだろうー、ファーック!
ウチの新作を見たいって人は、
『Indigo』をお友達にガンガン勧めてください。
それで僕たちは戦えるッ!
だいたいさぁ! うちが儲けてるってなんて幻想を
どっから拾ってくるんだよ、ボケがぁ!
(見えない敵に向かってシャドー寝技。蒲団の上で一人ゴロゴロ)

えっと、遅れ遅れになってますが、いろいろと企画も進行中だぜ。
十月半ばと十一月最初くらいにおもしれぇことやってやろうと思ってますので、
楽しみに待て、オラッ!
んじゃ、またっ!

2010年10月03日

うがあああああっ!(渡辺ファッキン僚一)

うがあああああっ!
Indigoを買ってぇぇぇぇぇ!
売りたい! マジで売りたいッ!

そうじゃなくて! うがあああああっ!
下からほんのちょっとだけネタバレ!
未プレイの人は読まないほうが吉かもしれないけど、
読んでも別にどうってことねぇっちゃねぇ!


なんかに使えねぇかなぁ、といろんな資料を呆然と眺めてたりすると、
とんでもない後悔に襲われることがある。
例えば『空の上のおもちゃ』の時は、マスターアップしてから、
岸信介(安保の頃の総理大臣が)が、満州財閥と繋がっている、
ということに気づいて、あー、もう、うがぁぁぁぁぁぁ! ですよ!
そんなもん絶対、作品に使えた設定なのにぃぃぃぃぃ!
なぜ見落とすかぁ!

んで今回はアレだ。
スターやヒールさんは夜でもない昼でもない曖昧な時間にしか登場しないってことは、
体験版をやっていただいた方ならすでにご存知かと思いますが……。
これですよ、これ! ヴリトラですよ。
「(前略)それを使って昼でも夜でもない夕暮れ時に唯一の弱点である口を攻撃し、ヴリトラを撃退した。」
ですって!
ヌァーーーーーッ!
絶対に使えた。絶対になんかに使えた!
っていうか外伝の舞台をインドに変えてた! くはっ!
渡辺ミステイク! ファック! もうやだ! おうちに帰って寝る! おやすみなさい!

2010年10月07日

殺人鬼とか(渡辺ファッキン僚一)

みんな~、元気ぃ? 僕、元気じゃない!
ぐふふふっ『Indigo』大好評絶賛発売中なのでよろしく!
詳しいことはまだ言えないけど、
いろいろおもしろいことを考えてるので、
諸君らもおもしろいことに参加する準備しとけ!

裏話3 ややネタバレあるので未プレイ人は読まないほうが吉かも。

最強さんは、もっともっと冷酷で、
唐突に現れてファッキン人を殺しまくったり、
突然、重要キャラを意味なく殺しちゃったりする、
そういうキャラにする予定でした。
だけど秋雨さんから上がってきた立ち絵の表情差分の中に、
僕の予想を超えて可愛らしい表情があって……。
それを秋雨さんに言うと、
「渡辺さんの差分指定に照れがあったじゃないでかー」
と言われて、ああ、そうだったなぁ、と。
そっか、最強さんはこういう顔もするキャラだったのか、と。
……こういう顔もできるキャラかぁ、ということを、
ずっと考えていたら、ああいったことになったというわけです。
秋雨さんのあの絵がなかったら、
『Indigo』はもっと殺伐とした作品になってたと思います。
というわけで、最強さんは秋雨さんが考えたと言っても
いいキャラだと思うのです。
こういうのがあるから、ノベルゲーはおもしれぇ!
秋雨さん、ありがとう!
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2010年10月08日

『幽霊的瞬間』(渡辺ファッキン僚一)

イエ~イ! 『Indigo』は好評発売中!
もう覚悟決めろや! ゼッテーおもしれぇって!
みなんおもしろいって言ってるよ! あいつもコイツも!
みんな買ってるよ!(血走った目で)
……というわけで、おもしいと思った人はお友達にも薦めてください。
いや、もう、マジで、頼む!
こんなおもしれぇノベルゲーはファッキンそうそうねぇぜ!

んじゃ、『幽霊的瞬間 第3話』
過去のはこっち。
『幽霊的瞬間 第2話』
『幽霊的瞬間 第1話』

「んじゃ、行くぜ」
返事を聞かずに歩き出した先輩の背中を追いながら、
私は左右をキョロキョロする。
大学って不思議な空間だ。
まず校舎が一つじゃないのが不思議。
無駄に広い敷地内に、校舎がいくつもあるのだ。
一つにまとめたら不都合なんだろうか?
敷地内の端の教室から端の教室へ移動することになったら、
それだけで十分以上かかってしまうんじゃないだろうか? 
しかも校舎だけじゃなくて、
コンビニや本屋や食堂や喫茶店まであるのだ。
一つの街みたいなのに、明らかにそうじゃない雰囲気。
生活臭がするけど、しない、みたいな。
本物と偽者の区別がつかないというか……。
社会と隔離されているのにされてない、というか。
間違いなくこの世なのに、この世じゃないような気がする。
もっともそれは、作りかけの巨大な彫刻が無造作に転がってたり、
行き交う人々を無表情で撮影する人がいたり、
コスプレの人がいたりする一方で、
高そうな楽器を持った物凄くお嬢様っぽい人々がいたりするからかも。
他の大学を歩いたことはないけど、きっとこんなんじゃないと思う。
大通りみたいな道を、ずーっと進んだ先にグラウンドがあった。
芸大のグラウンドなのに立派。
芸大生なんか運動なんかしなさそうなイメージなのに。
「このグラウンドは今年になってできたばっかでな」
「それでピカピカなわけですね」
ネットを支える鉄棒に錆び一つないのはそういうわけか。
「どこのサークルもこのグラウンドをファッキン使ってねーんだ」
「どうしてですか?」
「去年まで体育会系のサークル連中は校外の練習場を使ってたからな。
どこの部がどういう日取りでここを使うかって話で、
タコどもがもめてんだ」
タコさん達がもめてますか。
モヒカン先輩は、べっ、と勢いよく自分の足元に唾を吐き、
「ってことは、その間はここが俺達、どパンクのモンってことだ」
……勝手にそう決めたんですね。よくわかります。
っていうか青空サークルなんだ。部室はないんですね。
モヒカン先輩は突然、大声で、
「ウォーイ! 勝山! 新入部員を連れてきたぜ!」
「あっ、ちゃんと見つかったんだ。よかったね!」
グラウンドの向こう側にいた男子生徒が全力疾走で近づいてくる。
モヒカン先輩の知り合いだから、
同じくパンクファッションの怖い人かと思ったのだけど……。
白いセーターにジーンズ。
痩せ型でおそろしくさわやかな笑顔の人だった。
もっ、もっ、物凄く人が良さそう!
なんで、こんな人がモヒカン先輩と同じサークルに?
その人は私よりビックリして、
「えええっ?! きっ、キミが、くっ、久保寺……さん?」
「はっ、はい。私が久保寺ですけど……」
「あっ、ああ! あっ、ごめん。
女の子だって聞いてなかったものだから、ビックリしちゃって。
男子だと思い込んでたよ」
モヒカン先輩は平然と、
「ん~、言ってなかったか?」
「言ってないよ! モヒカンの話を聞いてたら、
男だと思うに決まってるだろ?」
モヒカン先輩はこの人に私がどういう人物だと説明したわけ?
モヒカン先輩は自分の足元に、べっ、と唾を吐いて、
「へっ、まぁ、いいや」
いや、よくないだろ。どうせあることないこと喋ったに決まってる!
だいたい私の変な逸話って、
モヒカン先輩がやらせたことばっかりじゃないか!
わっ、私は男子と間違われるような女の子じゃありません! 
モヒカン先輩は隣の白いセーターの背中をパンと叩いて、
「おう、こいつが二年の勝山だぜ」
「よろしく。二年の勝山。放送学科です」
「私は一年の久保寺みかです。文芸学科です」
「へっ、ついにどパンク部も三名になったぜ」
「えっ? 三名? えっ? これで全員ですか?」
 勝山さんはやわらかく微笑んで、
「そうだよ。今年度、モヒカンが新しく作ったサークルだからね。
久保寺さんに自分が後輩をやってる所を見せたくないんだって」
「えっ?」
モヒカン先輩は私から顔を背けて、
「っせぇな。そういうわけじゃねって。
ファッキン糞みてぇなサークルしかないから、
俺が新しいサークルを作るしなかっただけのことだぜ」
「……ええっ? このサークルって、
私のために作ったってことですか?!」
なっ、なっ、なんて! なんてありがた迷惑!
モヒカン先輩はビシッと私を指差して、
「ファック! 勘違いすんじゃねぇぜ!
別にオメーのために作ったわけじゃねぇ。
俺は先輩という存在が嫌いなたけだぜ!
俺の前に立つんじゃねぇ!」
「いやいや、モヒカン先輩だって、南陽高校の放送部じゃ、
普通に後輩やってたじゃないですか?
鈴夫先輩達と普通に仲良くしてたじゃないですか」
「あの人らは糞じゃねぇからいいんだよ。
とにかく、作っちまったんだ。
三人でファッキン地獄の果てまで行くぜ!」
……ファッキン地獄。
そんな所に私は連れ去られてしまうのか。なんてこった。
「オメーもこの動画を見りゃ、俺の言うこと理解できるぜ」
 モヒカン先輩は再び、べっ、と唾を吐いて、
「勝山、あのファッキンシットなブツを見せてやってくれ」
「うん、わかった」
 勝山さんは手にしていたバッグから、ノートパソコンを取り出すと、少しの間いじいじして、
モニターを私に向ける。メディアプレイヤーが立ち上がっていた。
「これは僕とモヒカンが一年の時に所属していた、
映像系サークルの作品なんだけどね」
「はい」
「ファック!」
「その中でも一番、発言力があるというか、そのサークルで目立つ人が作ったモノなんだ」
「ファック!」
「んじゃ、見せるね」
「ファック!」
あー、もう、横からファックファックうるさいなぁ!
私が相槌を打てないじゃないか!
よっぽどこれから見る映像が嫌いってことなんですね。
……いったいどんな映像なんだろう?
勝山さんが再生ボタンをクリックする。
生卵を屋上から次々と落とす様子が写されていた。
生卵が割れる映像とヒトラーの演説が交互に現れる。
はぁ、なるほど……なんかいかにもって感じだ。
なんていったらいいのかよくわからないけど、
いかにも芸大生って映像だ。
勝山さんは穏やかな声で、
「卵は固定観念でそれが割れるというのは、
新たな意識が芽生えるということ。
しかし、その先にあるのは悪魔的な未来かもしれない、
ということをこの作品で訴えたかったらしいよ」
「ファック! ファック!
俺はこんな作品を作るハンプティ・ダンプティ野郎を
先輩と呼ぶくらいなら、鎮痛剤のオーバードーズで死ぬぜ!」
「はぁ、死にますか……」
 鎮痛剤で自殺って痛くなさそうでいいですね。
って本気でやろうとしたら滅茶苦茶苦しむのかしれないけど。
「ファック! オメー、芸術ってなんだと思う?」
「えっ?」
「ファッキン芸大に来たんだから、考えたことくらいあんだろ?」
急にそんなこと言われても……。
「えっと、その……人を感動させることでしょうか?」
「違ぇよ! タコが! てめぇもハンプティ・ダンプティ野郎か?
そのうち塀から落として叩き割るぞ!」
「モヒカン先輩はどう思うんですか?」
「芸術ってぇのはびびらしたもん勝ちの世界だろうが。あん?
ピカソだろうがベートーベンだろうが、
あいつらは作品で、見る人、聞く人をびびらしたから、
名前が残ってんだ。びびらしたから凄ぇんだ!」
「そっ、そうなんですか?」
「ったりめぇだろ! 芸術は威嚇だ!
そんなふわふわファッションしてっから、んなこともわかんねぇんだ。
明日、ヘソにピアス開けに行くぞ、オラ」
絶対に行きません。というかヘソにピアスって開けるものなの?
モヒカン先輩は拳の裏側で、こつん、とモニターを叩いて、
「でっ、ひるがえって、コイツだ。この映像、びびるか?
世界で最初に、卵を落とす映像を撮って、
芸術だって言い出した奴は偉いし、俺だってびびるぜ?
だけどこんなもん何番煎じなんだよ。ファッキンありえねぇ!」
「はぁ……まぁ、そうですね。こんなの誰でも作れそうですもんね」
「まず、最初のどパンクの映像はこいつが、
いかにくだらねぇファッキン俗悪なシット精神で作られたかを
証明することからはじめるぜ、タコ野郎!」
……って言われてもなぁ。
 それって、私にかなり関係ないことっぽいぞ。
入学早々、変な争いに私を巻き込まないで欲しい。
「ついて来いッ!」
 モヒカン先輩と勝山さんの後について、
私は気乗りしないままトコトコとグラウンドの隅に向かう。

2010年10月13日

西居さんは豚だ(渡辺ファットン僚一)

えっと、ファック! アレです。みなさん元気ですか?
『Indigo』の素敵な絵を描いてくれてる素敵方々がいるので、
勝手に紹介するぜ、ヘブン! 問題あったら即削除します!

http://str13.web.fc2.com/
『Indigo』の4コマと小野瀬さんの絵が!
僕は戸井田さんが大好きです!

http://pixiv.cc/keita_is_kireida/archives/cat_50046874.html
マボーと疾風の岡井さん。岡井さんがどことなく耽美で素敵です!

http://blog.livedoor.jp/sumika_t/archives/52676427.html#
西居さんは豚です。長い感想、ありがとうございます!

他にもあるみたいだけど発見できなかったので!
しかし『Indigo』は検索しにくい!

pixivで『Indigo』で検索すると二人書いてくれている方がいます。
どうもありがとう!
そして『Indigo』と一切関係ないだろうけど、下の方に豚の絵が!
西居さんだと勝手に納得しておきます!
西居さんは豚だ!

2010年10月18日

『幽霊的瞬間 第4話』

ウィッス。幽霊的瞬間第4話。
過去のはこっち。
『幽霊的瞬間 第3話』
『幽霊的瞬間 第2話』
『幽霊的瞬間 第1話』

もし欲しい乙女系サークルがいたら、くれてやるわい! 
と言ったが、先に進むつれてなんかもう、
わけわかんないことになっていくのでどうかと思った。
あと、女が主人公で、脇役ほぼ男なのに、
最初に登場する男がモヒカンなのも相当にどうかと思った。
何もかもがダメな気がしてきた。
どこにも行き場のない作ファッキン品になりそうだが、
女の子の一人称が書きたい欲求にしたがって、
周囲のもろもろと関係なく、黙々と続く『幽霊的瞬間 第4話』。


立ち止まったモヒカン先輩の前には、
ビニールシートで隠された人の背くらいの高さの何かがある。
……かなり嫌な予感しかしないなぁ。
少なくとも私には想像もできないものが隠れているのだけは間違いない。
バッ、とモヒカン先輩はビニールシートを握ると、
「こいつが俺達の最終兵器どパンクくんだっ!」
一気に引いた。
そこにあったのは木製の、架空動物の骨格みたいなモノだった。
しっかりとした足があって、長い首のようなものがあって。
ラクダかキリンといえなくもないような気がする。
「……これは動物を模したオブジェですか?」
「ファック。どパンクくんだぜっ!」
名前はいいから。
勝山さんはどパンクくんをぽんぽん叩いて、
「これはローマ帝国で使われていた投石機を
四分の一の大きさで再現したものだよ。
一応、説明すると投石機とは、
石とかを遠くまで投げるための機械のこと。
昔の戦争で使われていたんだ。
大きな石を敵に向かって投げるんだ」
敵? 
大きな石? 
投げる?
「もっ、もしかして、ハンプティ・ダンプティ先輩に、
石をぶつけるつもりですか? 
そんなことしちゃダメです。人殺しになっちゃいますってば!」
「ファック!」
今のファックは、違う、のファックだ。
一年ぶりの再会なのに、
モヒカン先輩の使う七色のファックを聞き分けられる私って凄いなぁ。
モヒカン先輩はどパンクくんの横にあった、
四角い機械をゴンッと蹴って、
「こいつはファッキン孵化器だぜ」
「孵化器って、卵をヒヨコにする機械ですか?」
「ファック!」
今のファックはイエスのファックか。
「で……その……その……えっと、何が行われるんですか?
孵化器をハンプティ・ダンプティ先輩にぶつけるんですか?」
「違ぇよ。オメーのファッキン入学祝いに、
孵化器を投石機で打ち上げたるぜ」
「……なぜ?」
いっ、意味がわからない。過程も結論も見えない。
モヒカン先輩の言うことは闇すぎる。
「オメーもさっきの映像を見てドたまに来たべや?」
「いえ、別にそこまでは……」
「ファック!!」
「はっ、はい。頭に来ました」
「ハンプティ・ダンプティ野郎が卵を落とすなら、
俺達は孵化器を宇宙の果てまで打ち上げる! 
これが俺達の芸術だッ!」
「そっ、それが私達の芸術でしたか?」
 らなかった! 斬新な意見だ!
「卵を落とした奴は腐るほどいるだろうが、
孵化器を打ち上げ奴は多分いねぇぜ! 世界初!
ファッキン史上初! 世界がひっくり返るぜ!」
……ひっくり……返るだろうか?
「ファック!」
 モヒカン先輩の掛け声と同時に、
勝山さんが投石機についたハンドルみたいなモノをぐりぐり動かす。
勝山さんも私と同じく、
モヒカン先輩の七色の意味を持つファックを、
正確に聞き分けられるらしい。
モヒカン先輩が投石機の真ん中にある、
巨大なスプーンのような部分に、
モヒカン先輩が孵化器を慎重に置いたのを見た勝山さんは、
バックの中から動画撮影用のカメラを取り出した。
画面を見ながらレンズを空や地面に向けて振って、
「こっちの準備はいいよ。撮影の準備もオッケー」
「おっし、こっちもいいぜ、オラッ!」
 モヒカン先輩は私の背中をどんっと叩く。
「うぷっ。え? なんですか?」
「オメーの入学記念だ。オメーが打ち上げの合図をするんだぜ!」
「えっ? 私が……どうしてですか?」
「ったりまえじゃねぇか。オメーを祝うために、三ヶ月もかけて作ったどパンクくんだぜ」
 ……三ヶ月かけましたか。
はぁ。相変わらずモヒカン先輩は凄い行動力だなぁ。
自分が楽しいから、というのが制作の一番の理由だろうし。
二番目の理由はさっきの卵を落とす映像への怒りだろうし。
そうだとしても、私のために三ヶ月かけてくれた、
と言われるのは……なんというか、まぁ、その……。
悪い気はしない。
モヒカン先輩はしょうがないんだから。
私は、こほん、とセキをしてから、
「えっと、んじゃ、言いますね」
勝山さんはカメラを振って、
「こっちはいつでもいいよ」
「俺もファッキン準備できてるぜ、タコ助!」
それじゃ……。
私は思いっきり息を吸い込んで、大きく口を開く。
大学に入学して最初の大声だから、思い切って言ってやる。
「ファック!!」
モヒカン先輩みたいに叫んだ瞬間、
ドゴンッ、と鈍い音を響かせて、巨大なスプーンが跳ね上がり、
孵化器がびっくりするほど高く舞い上がった。
うっ、うわ~。まっ、まさかここまでのものとは……。
私は口をぽっかりと開けて、孵化器を見つめる。
空の高い場所で太陽と重なった孵化器が、
妙にゆっくりと落下を始める。
何と言うか、その……ハッキリ言って意味は全然わかんないし、
オリエンテーションをさぼって何してるんだ私、
っていう冷静な自分もいるし、ちょっと悔しい気もするんだけど……。
だけど。
何かが高い場所にある、というのはそれだけで感動してしまう。
モヒカン先輩風に言うなら、びびってしまう。
ドシャと落ちて、こなごなに砕けた孵化器に駆け寄って、
バカみたいにはしゃぐモヒカン先輩と勝山さんを見ながら、
私はまだ変な感動の余韻に微妙に浸っていた。

2010年10月19日

西居さんの使わなかった表情。その他。ヒグマとか。(渡辺ベアー僚一)

とらのあな』さん。
アリスブックス』さん。
メロンブックス』さん。
大好評ッ! 今すぐ買えッ!
本当におもしれぇから!

で、秋雨さんにはいろいろがんばってもらったわけですが、唯一の使わなかった表情が!
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号泣してます。西居さん。
西居さんはいかにも泣きそうなのに一度も泣かなかったので……。
殺人鬼の時は表情から広がっていったけど、これは違和感が消えないままになっちゃって。
この西居さんは西居さんじゃないな! 変な発注してごめん、秋雨さん!

サークルと全然関係ないことですが、衝撃が走ったので。
母から電話。
犬と散歩してたら土手をあがってきた羆と3メートルくらいの距離で遭遇したとのこと! 
羆は黒くて可愛かったとのこと! 可愛かったじゃねぇよ! 
犬(シェパード)にほえられて羆はびびって退散。
よたよた走る姿が可愛かったとのこと。だから可愛いじゃねぇよ。
マミーが食われなくて本当によかった!
んで、帰り道で、道路を慌てて横断する丹頂鶴の夫婦とお子さんに遭遇。
こちらも大変に可愛かったとのこと。こっちは可愛いでいいや。
しかし、なんだ? うちの実家はサファリパークか?
マジで山奥なんだが、そこまでとはな……。
そにしてもヒグマですかね。ツキノワグマじゃねぇですからね。
あいつらマジで人間食うからな。超怖い。

ちなみに東京からうちの実家に遊びに来た人は、
何気なく散歩するたげで、
三泊する間に野生の動物、エゾシカ30匹くらい、キタキツネ1匹、オジロワシ1匹、
タンチョウ3匹、エゾリス2匹を見て帰りました。
大自然を満喫したかったらウチの実家に遊びに来いッ!

2010年10月22日

桜野さんの立ち絵。

とらのあな』さん。
アリスブックス』さん。
メロンブックス』さん。
大好評ッ! 今すぐ買えッ! 本当におもしれぇから!
こんなに(中略)ヒグマが(中略)なんか実家の墓場によく出るらしいよ?
土葬の風習がまだ(中略)ゾンビヒグマが!

桜野さんの一度しか使わなかったポーズ!
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桜野さんは古今まれに見る生粋の殺人鬼少女なので、
がんがんこのボーズを使いまくる予定でした。
しかし! 桜野さんが他人視点の時に殺しに行くシーンってあんまないのな。
あっても中盤以降の変なことになっちゃった特殊立ち絵を使うし。
というわけで絶対ファッキン必要! と熱く言ったのに一度しか使わなかったという、
悲しい立ち絵なのですよ。

しっかし、桜野さんは書いていて楽しかったなぁ。
桜野さんくらい気が狂ったキャラをこれから先に書くことってあるのかしらん。

そしておっぱいけっこうデカイな。下にたれるとぼいんぼいんじゃないですか。
そりゃガールにからかわれるわ。

2010年10月24日

乳比べ(渡辺おっぱい僚一)

とらのあな』さん。
アリスブックス』さん。
メロンブックス』さん。
大好評ッ! 今すぐ買えッ! 本当にどうしようもなくおもしれー!
そしてなぜか女性の方々に好評!
男も女も大丈夫! バイセクシャル!


桜野さんのおっぱいのことを考えていたら、
針子ちゃんも巨乳じゃないですか、と言われて、
んじゃ、もうどういうランキングなのかハッキリさせたらええねん!
というわけで1位
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文句なし!
デカ乳といったらののの!

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2位はイェルを代表してカトリーナ。
3位桜野さん! こういう顔の時は殺しちゃうおうかなぁ、と考えてる。
4位予想外! ここで針子ちゃん! かなり上位だ!
5位とんぼちゃんも意外とでかかった!
6位鈴ちゃん。お姉さんキャラとして一応合格か?!

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7位殺人鬼は不満そう。
8位キヨは空手少女なので小さめの方が試合で有利か?
9位小野瀬さんはマボーがいれば別にね。
10位の多々良さんは念力とかで大きくしたり小さくしたりできそうなのが怖い!
11位のガールは小さければ小さいほうがいいという思想。

とにかく桜野さんと針子ちゃんは本人達が思っている以上にでかかった!
そういうことです!

あと表情は適当に入れたんだけど、
恥ずかしそうにしてるのか、「ののの」と「針子ちゃん」だけ、
というのは意味深かもしれん!


あと、関係ないですが、僕は貧乳好きです。
そういえば貧乳好きの男キャラが出てこないな……。
まぁ、作品に自分を投影したりとかは
なるべくなるべくしないように、
そう見えないようにしよう、と考えているから、
それでいいんだけど。

2010年10月31日

幽霊的瞬間5話

進めば進むほど乙女系から離れていく『幽霊的瞬間 5話』。
いったい誰が読んでるのかわからぬままそれでも続く!

『幽霊的瞬間 第4話』
『幽霊的瞬間 第3話』
『幽霊的瞬間 第2話』
『幽霊的瞬間 第1話』


あれ?
引き寄せられた、としか言いようがない。
自然に首が右側へ動き、斜め上を見上げる。
近くの校舎の屋根のはしっこに立って、
こっちを見下ろす男子生徒がいた。
なぜか妙に気になる。
手すりはないみたいだから、
あそこは屋上じゃなくて屋根だと思うんだけど……。
どういう意味があるのか、
砕けた孵化器をドカドカと蹴りまくってるモヒカン先輩に、
「あの校舎って屋上があるんですか?」
「あん? ……ありゃは映像の糞どもの校舎だな。勝山、どうなんだ?」
「6号館には屋上はないよ。あったら撮影に使ってるし。
うちらが撮影に使う屋上は8号館だからね」
「どうして、んなことファッキン聞くんだ?」
「あそこの屋根に人が……あれ? いない。でもいたんですよ。
こっちをじっと見てたから気になって……」
モヒカン先輩は、べっ、と自分の足元に唾を吐く。
「あー、幽霊だろう」
……幽霊ですと?
勝山さんが微笑んで、
「この学校は幽霊の噂が多いことで有名なんだよ」
……ここは小学校か。
芸大だからみんな想像力がありすぎて、そうなっちゃうのかな?
ちなみに私は幽霊を肯定も否定もしないけど、
幻覚がどうしたこうしたとか、脳のイタズラによる云々、
って説明にリアリティを感じるタイプ。
おばぁちゃんの語る幽霊話は信じたいけど、
霊感の強い芸能人の話とかは冷めた目で見ちゃう。
「幽霊は怖いから嫌いだぜ、ファック!」
ファック混じりにそんな可愛いこと言われても。
「でも幽霊って感じじゃなかったですよ」
勝山さんはなぜか少し緊張した様子で、
「6号館の屋根に行って確かめみようか?」
「いえいえ、いいです。そこまで気になるってわけじゃないので」
「ファック!」
今のは、いいことを思いついたぞ、っていうファックだ。
もちろん、モヒカン先輩にとってのいいことであって、
それが私にとってもいいことな可能性は低い。
「何を思いついたんですか?」
「どパンクくんでオメーを6号館の屋根まで打ち上げる、
っていうのはどうだ?」
えっ?
「ええええええっ?! そっ、そんなことできるんですか?」
勝山さんが苦笑して、
「多分、無理だろうね。
壁にぶつかって大怪我する可能性の方が高いと思うよ」
「最ファッキン高じゃねぇか! 無駄死に最高! 
かなわねぇ、とわかっていても権力の壁にぶつかるのがパンクだぜ!」
実際に壁にぶつかって死ぬのはパンクじゃ……パンクなのかな?
「とにかくいいです。入学早々死にたくありません」
「つまんねぇ野郎だぜ」
そう言うならモヒカン先輩が飛べばいいじゃん。
っていうか、私は女のなので野郎じゃない。
「まぁ、その話はもういいじゃない。久保寺さんも気にしないって言っているんだからさ」
「ケッ。んじゃ、歓迎会といくか!」
「えっ? そんなの別にいいですよ」
「黙れ、ボケ! 新歓コンパの開始じゃ! 勝山準備してくれ!」
「了解」
勝山先輩はどパンクくんを覆っていたビニールシートを、
ばさっとその場に広げた。
えっ?
「あの新歓コンパってここでやるんですか?」
「心配しないでいいよ。この学校、校内での喫煙飲酒が認められてる、
というか完全放置状態だから。
未成年でも怒られるってことはまずないよ」
「はぁ……そうなんですか」
そういうことじゃなくて……居酒屋とかじゃなくて、ここでするんだ。
グラウンドの片隅でいきなり飲み会が始まってしまうんだ。
ちょっと恥ずかしいんですけど。
本当にいいんですか? グラウンドで酒盛りって。
……こっ、これが大学か~。
「ファーック」
モヒカン先輩は、どかっとビニールシートの真ん中に、
壊れた孵卵器を投げ落として、
「シット! シット! シット! オラッ! 頭が高けぇよ、オラッ!」
靴底でがんがん蹴りまくって無理矢理、
表面を水平にすると、自信満々に私を見つめて、
「テーブル」と言った。
「凄く野蛮なテーブルですね」
「そして酒! 大五郎! 下町のナポレオンッ! 
鬼殺し! そして、宝焼酎!」
「うわー。すごーいやー」私は平坦な声で言う。
全部、焼酎なんですね! しかも安いのばかり! 
いや、安いのはいいですよ。
モヒカン先輩がお金を持ってるなんて思わないから。
それで当然だし、そのことを責めようとはまったく思いません。
だけど、せめて! 私は未成年の女の子なんだから、
せめて、杏とか梅とかの甘いお酒を用意してくれてもよくありません?
というか焼酎を割るジュースとか。ウーロン茶でもいいから!
モヒカン先輩はプラスチックの容器をデコボコなテーブルに置いていく。
「も、モヒカン先輩……それは?」
「プリン」
「プリン?!」
プリンを肴に焼酎?!
「プリンはないんじゃありませんか?」
「あん? テメーが女だから甘味を用意してやったんじゃねぇか。
好きだったろ、ファッキンプリン」
「そうじゃなくて!」
「……牛乳プリンがよかったか?」
「そうじゃなくて!」
「安心して、久保寺さん」
ああ、勝山さん! 私の言いたいことわかってくれますよね?
勝山さんはスーパーの袋をごそごそして、
「マヨネーズたっぷりのサラダ巻き、
燻製のホヤ、しょっぱすぎるウニの瓶詰め」
……まぁ、その……いいんですけど。いいんですけど、
私はもっと普通が好きです。ポテトチップスレベルで大丈夫です。
「そして、今日の目玉! 馬刺しだよ!」
「馬刺し!?」
「あっ、大丈夫だよ。
ここに来る直前に肉屋さんから直接買ってきたから。新鮮そのもの」
「あっ、あの……ですね」
「ん~、あー、北海道じゃ馬刺し食わないからな。
びびるな。うめーし、焼酎にファッキン合うんだぜ」
「いや、あの……」
……馬刺し?!
野外で、馬刺し?!!


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